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無所住心について、森田正馬の誤り。

森田療法で、「無所住心」という言葉が用いられることがあります。
まず、森田正馬自身の説明を引用します。

 無所住心
 私たちの健康な注意作用について考えると、禅に「まさに無所住にして、その心を生ずべし」という言葉がある。無所住心とは、私たちの注意がある一点に固着、集注することなく、しかも全精神が常に活動して、注意の緊張があまねくゆきわたっている状態であろう。この状態にあって、私たちははじめて事に触れ、物に接して、臨機応変、すぐにもっとも適切な行動で、これに対応することができる。
 例えば電車に乗って、つり革を持たず、読書しながら電車の動揺に倒れず、乗換駅を忘れず、スリにかからず、その時々の変化に応ずることのできるのは、この無所住心である時にはじめてできることである。
 なお、電車に乗るとき、この無所住心の状態はどうしてできるかといえば、身体の全重量を一方の足にて支え、他方の足は浮き足にして、つま先立ちにし、体操の時の「休め」の姿勢をとり、そのまま平気で何の心構えもなく、いわゆる「捨身」の態度でいさえすればよい。
 この身体の姿勢と心の態度とは、心身の不安定の状況にあるものである。したがってそのために、精神は全般に緊張して外界の変化に応じ、注意が自由自在に活動することのできる状態である。
 およそ神経質の症状は、注意がその方にのみ執着することよって起こるものであるから、その療法は、患者の精神の自然発動をうながし、その活動を広く外界に向かわせ、限局性の注意失調を去って、結局これを無所住心の境地に導くことにあるのである。これが私の神経質に対する特殊療法(=後に森田療法と呼ばれる)の発足点である。


森田は「無所住心」を、注意が一点に集中することなく、精神が全般に緊張して外界の変化に臨機応変・自在に活動する状態としています。
一方、禅の無所住心は、金剛経の「応無所住而生其心(おうむしょじゅうにしょうごしん)」にその起源をみることができるでしょう。六祖・慧能禅師が五祖から「金剛経」を説かれた際に、この一節を聞くに至って「言下に便ち一切万法は自性を離れざることを悟」ったと伝えられています。
その金剛経の部分を以下にみてみましょう。

 第十品・莊嚴凈土分
佛告須菩提。於意雲何。如來昔在然燈佛所。於法有所得不。
不也。世尊。如來在然燈佛所。於法實無所得。
須菩提。於意雲何。菩薩莊嚴佛土不。
不也。世尊。何以故。莊嚴佛土者。即非莊嚴。是名莊嚴。
是故須菩提。諸菩薩摩訶薩。應如是生清凈心。
不應住色生心。不應住聲香味觸法生心。應無所住而生其心
須菩提。譬如有人。身如須彌山王。於意雲何。是身為大不。
須菩提言。甚大。世尊。何以故。佛說非身。是名大身。


 佛,須菩提(すぼだい)に告ぐ,「意に於(おい)て云何(いかに)。如来は昔,燃燈佛(ねんとうぶつ)の所に在りて,法に於て所得有りや不(いな)や。」
「不也,世尊。如来は燃燈佛の所に在りて,法に於て実(じつ)に無所得。」
「須菩提,意に於て云何。菩薩は佛土を荘厳(しょうごん)するや不や。」
「不也,世尊。何を以ての故に。佛土を荘厳する者は,即ち荘厳に非ず。是を荘厳と名づく。」
「是故に須菩提,諸の菩薩・摩訶薩は,應(まさ)に是の如く清浄(しょうじょう)の心(しん)を生ずべし。應に色に住して心を生ずべからず。應に声香味触法に住して心を生ずべからず。應に住する所無くして而(しか)も其(その)心を生ずべし。
 須菩提。譬(たと)へば人有り身,須弥山(しゅみせん)王の如きんば,意に於て云何。是身大なりと為さんや不や。」
須菩提言く,「甚(はなは)だ大なり,世尊。何を以ての故に。佛は非身を説けり,是を大身と名づく。」

 師は問われた──「スブーティよ、どう思うか。如来が、ディーパンカラ如来のみもとで得られたものが、なにかあるだろうか。」
 スブーティは答えた──「師よ、そういうことはありません。如来が、ディーパンカラ如来のみもとで得られたものは、なにもありません。」
 師は言われた──「スブーティよ、どう思うか。菩薩は、清らかな仏国土をこの世に現すだろうか。」
 スブーティ答えた──「師よ、そういうことはありません。清らかな仏国土をこの世に現すということはまさしく、清らかな仏国土をこの世に現さないということだからです。それだからこそ、如来は〈清らかな仏国土をこの世に現す〉と言われるのです。
 師は言われた──「それだから、スブーティよ、菩薩・すぐれた人々は、次のように清らかな心をおこさなければならない。
ものの形にとらわれて心をおこしてはならない。音や、においや、味や、からだの感覚や、心の思いにとらわれて心をおこしてはならない。まさに何ものにもとらわれることなく、その心をおこさなければならない。
 スブーティよ、たとえば、ここにひとりの人がいて、その体は整っていて大きく、山の王スメール山のようであったとするならば、スブーティよ、どう思うか。かれの体は大きいであろうか。」
 スブーティは答えた──「師よ、それはとてつもなく大きいです。なぜかというと、師よ、如来は、体というものを説いたわけではないからです。それだからこそ、大きい〈体〉と言われるのです。」

無所住心(金剛経)

金剛経において、「無所住心」は、見えるものの形、音、におい、味、からだの感覚、思いのいずれにもとらわれない心を言い、まさに何ものにもとらわれることなく、何ものをも対象としてとらえることもないままで、おこる心を言っています。
金剛経のほかの部分では、菩薩・すぐれた人々には、「自我という思いはおこらないし、生きているものという思いも、個体という思いも、個人という思いもおこらない。また、〈ものという思い〉もおこらないし、同じく、〈ものでないものという思い〉もおこらない。また、思うということも、思わないということもおこらない。」と言われています。
生じた心が結果として、森田が言ったような働きをすることがあるとしても、金剛経における「無所住心」の説き方の力点は、あきらかに「そこではない」のです。
森田の言う「全精神が常に活動して注意の緊張があまねくゆきわたっている」というのが、注意の対象物を認めたうえでの精神活動を言うのであるとすれば、金剛経の「無所住心」とはまったくの無関係ということになります。
かたち、音、香り、味、体の感覚、浮かんでくる思いといった、いかなる対象にもとらわれない、それらを「もの・相手」として認めて腰かけない、そうしてなお、生じる「心」がいかなるものか、よく見届ける必要があるんじゃないでしょうか。

「応無所住而生其心」の言下に「一切万法は自性を離れざることを悟」った慧能は、こう言ったと伝えられています。

「なんとまあ、自性はもとより清浄であって、
 なんとまあ、自性にもとより生滅はなく、
 なんとまあ、自性はもとより完全なものであり、
 なんとまあ、自性はもとより微動だにもせず、
 そのままあらゆる現象が生じていたとは!」

物の価値

「高価だから」価値があるのではない。
その人の本性に触れ、その人をより自由にする物にこそ価値がある。

その人を縛り付け、身動きをとれなくするのなら、
それがどんなに高価なものであっても、
あるいはほかの人にとってどんなに価値があると思われているものであったとしても、
その価値はマイナスだ。

正師

正師から正法を聞き、行うものは幸いである。
正師から邪法を聞き、行うものは苦しむ。

邪師から正法を聞き、行うものは幸いである。
邪師から邪法を聞き、行うものは苦しむ。

念仏

「念仏の実践は 大空に風の吹き抜ける如くであれよ」

鈴木大拙


念仏だけではありません。
虚空が空を打つ。
一切の行いはそのように行われます。
虚空が空を打つ。
そのようにして森羅万象が、現れています。

体得とは何か

「体得」について、今去来した言葉を好き勝手に記しておきます。



  1. 誰が体得するのか
  2. いつ体得するのか
  3. どこで体得するのか
  4. 何を体得するのか
  5. 誰と体得するのか
  6. どのように体得するのか
  7. 何が体得を妨げるのか
  8. 体得してどうなるのか
  9. 体得する意味はあるのか
  10. 体得した人のあり方とはどのようなものか
  11. とどのつまり、体得とは何なのか



  1. 誰も体得しない。体得には、「誰」という中心がない。
  2. 今において体得するよりほかにないが、「今」という時間軸も認められない。
  3. この身が覚知できる、一切の現象においてであるから、定まった場所ではない。まさに「どこででも」。
  4. 「何を」と限定できるものではない。体得は、主格・目的格の喪失である。
  5. 体得において自己がないのと同様に他者もない。一切が自己である。
  6. 体得を妨げるものがなければ、「おのずから」「かくのごとし」である。
  7. 「かくあるべし」が体得を妨げる。「かくある事実」が見えないのである。
  8. もとに戻る。「体得」さえも面倒ごとである。
  9. 平和になる。意味を求めて争う必要はない。
  10. その人自身で問題がなく、目の前の人自身で問題がない。
  11. 以上のような言葉遊びは、入り込む余地がない。



言葉は言葉です。
「体得」が先。言葉はあとです。
騙されませんように。

テーマ : 心、意識、魂、生命、人間の可能性
ジャンル : 心と身体

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Author:kugla
マインドフルネス、森田療法、仏教、禅と精神医学

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